B01:「量子化学と統計科学の併用による金属酵素の解析」
兼松 佑典(広島大学大学院 先進理工系科学研究科)
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ヘムは鉄イオンとポルフィリンからなる代表的な生命金属補因子です。タンパク質との結合により多様な機能を獲得し、電子伝達、物質運搬、生化学反応触媒などの非常に広範な生命現象を担っています。ヘムタンパク質の結晶構造解析は古くから行われており、蛋白質構造データバンク(PDB)には2022年4月現在で5900個以上のヘムタンパク質の構造が登録されています。これに基づいた構造-機能相関解析により構造と機能の紐付けが進められている一方で、統計解析だけではなぜその構造がその機能に結びつくかはわからないため、「生命はどのようにしてヘムに潜在する複数の機能を選り分けながら引き出しているのか」という問いに対する答えには到達できません。そこで本研究ではヘムタンパク質をはじめとした金属含有酵素を対象として、酸化還元電位などの量子化学計算で求められる物性値によって統計解析で得られる構造特徴の意味付けを行うことで、機能分岐の起源を化学のことばで説明付けることを目指します。

【関連する代表的論文】
Y. Kanematsu, Y. Imada, H.X. Kondo, and Y. Takano
“Statistical and quantum-chemical analysis of heme porphyrin distortion effect in heme proteins: differences between oxidoreductases and oxygen carrier proteins”
Chem. Phys. Lett., 710, 108-112 (2018)
DOI: 10.1016/j.cplett.2018.08.071
H.X. Kondo, Y. Kanematsu, G. Masumoto, and Y. Takano
“PyDISH: database and analysis tools for heme porphyrin distortion in heme proteins”
Database 2020, baaa066 (2020)
DOI: 10.1093/database/baaa066
T. Nomura, T. Kimura, Y. Kanematsu, D. Yamada, K. Yamashita, K. Hirata, G. Ueno, H. Murakami, T. Hisano, R. Yamagiwa, H. Takeda, C. Gopalasingam, R. Kousaka, S. Yanagisawa, O. Shoji, T. Kumasaka, M. Yamamoto, Y. Takano, H. Sugimoto, T. Tosha, M. Kubo, and Y. Shiro
“Short-lived intermediate in N2O generation by P450 NO reductase captured by time-resolved IR spectroscopy and XFEL crystallography”
Proc. Natl Acad. Sci. USA, 118, e2101481118 (2021)
DOI: 10.1073/pnas.2101481118
