[A01-1: Yoshitsugu Shiro]
“Heme controls the structural rearrangement of its sensor protein mediating the hemolytic bacterial survival”
Megumi Nishinaga, Hiroshi Sugimoto, Yudai Nishitani, Seina Nagai, Satoru Nagatoishi, Norifumi Muraki, Takehiko Tosha, Kouhei Tsumoto, Shigetoshi Aono, Yoshitsugu Shiro, Hitomi Sawai
Comunications Biology, 2021, 4, 467
doi: 10.1038/s42003-021-01987-5
(ひとこと) 病原菌がヒトなどの動物の血液から鉄栄養素として獲得した「ヘム」 の濃度を制御するために用いる「ヘム濃度センサータンパク質」の立体構造を決定し、世界で初めてその作動機序を原子レベルで解明しました。この結果により、 病原菌が宿主の体内で生き残っていくために利用するシステムへの理解が進み、 このシステムをターゲットにした新たな抗菌薬開発に貢献できる可能性があります。 なお、プレスリリースが所属機関よりでていますのでこちらもどうぞ。
“Short-lived intermediate in N2O generation by P450 NO reductase captured by time-resolved IR spectroscopy and XFEL crystallography”
T. Nomura, T. Kimura, Y. Kanematsu, D. Yamada, K. Yamashita, K. Hirata, G. Ueno, H. Murakami, T. Hisano, R. Yamagiwa, H. Takeda, C. Gopalasingam, R. Kousaka, S. Yanagisawa, Os. Shoji, T. Kumasaka, M. Yamamoto, Y. Takano, H. Sugimoto, T. Tosha, M. Kubo, and Y. Shiro
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2021, in press
doi: 10.1073/pnas.2101481118
(ひとこと) 亜酸化窒素(N2O: Nitrous Oxide)は、二酸化炭素(CO2)の約310倍の効果を示す温室効果ガスであり、オゾン層を破壊する気体でもあります。地球環境のN2Oの75%以上は土壌中のカビや細菌などの微生物が産生します。しかし、そのN2O発生の分子機構は、20年以上未解明なままでした。本研究では、微生物によるN2O産生の主役である鉄を活性中心に含む一酸化窒素還元酵素(NOR: Nitric Oxide Reductase)に着目し、N2O産生の分子機構を、SACLAを用いた無損傷結晶構造解析と時分割赤外分光法の最先端の計測手法を組み合わせることにより、原子・電子レベルで解明することに成功しました。なお、プレスリリースが所属機関より出ていますので、こちらもどうぞ。
[A01: Shun-ichi Tanaka]
“Multicolor imaging of calcium-binding proteins in human kidney stones for elucidating the effects of proteins on crystal growth”
Yutaro Tanaka, Mihoko Maruyama*, Atsushi Okada*, Yoshihiro Furukawa, Koichi Momma, Yuki Sugiura, Rie Tajiri, Koichi P. Sawada, Shunichi Tanaka, Kazufumi Takano, Kazumi Taguchi, Shuzo Hamamoto, Ryosuke Ando, Katsuo Tsukamoto, Masashi Yoshimura, Yusuke Mori, Takahiro Yasui
Scientific Reports, 2021, in press,
doi: /10.1038/s41598-021-95782-1
(ひとこと) 尿路結石は90%以上を無機成分、残りの0.1~10%程度を100種類以上のタンパク質等の有機成分が構成しています。結石に含まれる結晶の状態(結晶の種類、結晶構造、粒径分布など)は患者の尿環境を直接的に反映しており、さらにタンパク質は結晶の成長に大きく影響します。これまでにも、何らかのタンパク質が結石形成を加速する可能性が示唆されてきましたが、多種類のタンパク質がそれぞれどのように結石内に局在をするのかを調べる方法が無く、結石形成過程における各タンパク質の働きは十分に明らかではありませんでした。今回、大阪大学高等共創研究院(大学院工学研究科兼任、京都府立大学特任講師准教授兼任)の丸山美帆子准教授、名古屋市立大学大学院医学研究科 大学院生の田中勇太朗臨床研究医(博士課程 腎・泌尿器科学分野)、名古屋市立大学大学院医学研究科の岡田淳志准教授(腎・泌尿器科学分野)らの研究グループとの共同研究により、尿路結石の形成に深く関わる3種類のタンパク質(オステオポンチン、プロトロンビンフラグメント1、カリグラニュリンA)を例として、結石内部における各タンパク質の局在状態をマイクロメートルスケールで可視化する技術を世界で初めて開発しました。今後、これまで明らかでなかった尿路結石の形成メカニズムが詳しく解明されることや、そのメカニズムに基づいた新しい予防法の開発が期待されます。