[A02-1: Yoshiaki Furukawa]
“Does wild-type Cu/Zn-superoxide dismutase have pathogenic roles in amyotrophic lateral sclerosis?”
Furukawa Y and Tokuda E
Transl. Neurodegener., 2020, 9, 33
doi: 10.1186/s40035-020-00209-y
(ひとこと) 銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)をコードする遺伝子に変異が生じると、神経変性疾患の一種である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症することが知られています。しかし、SOD1遺伝子変異を原因とするALSは全症例の数%にすぎず、ほとんどの症例では原因が不明の孤発例です。私たちを含めたいくつかの研究グループから、孤発性ALSにおいても野生型SOD1の構造異常が検出されるという報告がなされていますが、野生型SOD1の関与を全く支持しない報告もあり、見解が明確に分かれています。そこで、孤発性ALSにおける野生型SOD1の病理学的役割について、これまでの研究を網羅的に調査し、賛否両論が生じる理由を探りました。
[A02-3: Isao Hozumi]
“MicroRNA-5572 Is a Novel MicroRNA-Regulating SLC30A3 in Sporadic Amyotrophic Lateral Sclerosis”
Kurita H, Yabe S, Ueda T, Inden M, Kakita A and Hozumi I.
Int. J. Mol. Sci., 2020, 21, 4482
doi: 10.3390/ijms21124482
(ひとこと) 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)の明確な発症機構は明らかにされていない。これまでに、ALS患者の剖検脊髄中において亜鉛輸送体であるSLC30A3発現量の有意に低下していることを報告した。またALSにおけるmicroRNA制御経路の異常が疾患の病因に寄与することが示唆されている。そこで、ALS患者におけるSLC30A3発現量低下のメカニズムは明らかになっていないことから、ALS患者のSLC30A3に関連する新規microRNAの探索を試みた。網羅的マイクロアレイ解析では、ヒトmicroRNA2578個のうち、ALS群において2倍以上発現増加したmicroRNAが37個、半分以下に発現減少したmicroRNAが35個存在した。それらをReal-time RT-PCR法で確認した結果、miR-5572がALS群にて有意に増加し、miR-139-5pが有意に減少していた。次に、ALS群において有意に増加していることが認められたmiR-5572の標的遺伝子候補の1つとして、SLC30A3に注目し、miR-5572のmimicをHEK293細胞に導入したところ、SLC30A3 mRNA及びSLC30A3タンパク質発現が有意に減少していた。また、miR-5572のSLC30A3遺伝子の3’-UTRへの直接的な結合による転写抑制調節を明らかにした。以上より、miR-5572の発現増加が、孤発性ALSにおけるSLC30A3減少に関与することを明らかにした。
“Characteristics and Therapeutic Potential of Dental Pulp Stem Cells on Neurodegenerative Diseases”
Tomoyuki Ueda, Masatoshi Inden, Taisei Ito, Hisaka Kurita, and Isao Hozumi
Front Neurosci, 2020, 7, 407
doi: 10.3389/fnins.2020.00407
(ひとこと) 本総説で、歯髄幹細胞(DPSC)に着目し神経変性疾患に対する効果について解説した。DPSCは細胞増殖と多能性を有しており、神経変性疾患のモデルに対して保護効果があることが認められている。この保護効果の一端にはDPSCから放出される栄養因子も関連している。近年、多くの栄養因子が含有されている歯髄幹細胞の無血清培養上清(DPCM)が神経変性疾患のモデルに効果的であることが報告されている。さらに、ヒトの乳歯歯髄幹細胞の無血清培養上清(SHED-CM)には、DPCMより多くの栄養因子、サイトカインとともに、バイオメタルを含有しており、神経保護も促進することが知られている。このような知見から、SHEDを含むDPSCが新規の神経変性疾患治療薬シードとして期待される。
“The neuroprotective effects of activated α7 nicotinicacetylcholine receptor against mutant copper–zinc superoxide dismutase 1 mediated toxicity”
Taisei Ito, Masatoshi Inden, Tomoyuki Ueda, Yuta Asaka, Hisaka Kurita, and Isao Hozumi
Sci Rep, 2021, in press
doi: 10.1038/s41598-020-79189-y
(ひとこと) 家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子とされる銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)の変異は、細胞内に異常タンパク質の蓄積を引き起こす。本論文で着目したα7ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAchR) の活性化は、ALS及び他の神経変性疾患において神経保護効果を有することが示唆されていたが、異常タンパク質の蓄積に対する効果は明らかにされていない。変異SOD1が蓄積するモデル細胞を用いて、その効果について検討を行った。結果、α7 nAchRの活性化によって、変異SOD1の蓄積が抑制され、細胞生存率の回復を示した。この効果は、タンパク質分解経路の一つであるオートファジーによるものであった。さらに、α7 nAchRの活性化によるCa2+の流入を介したAMPK-mTOR経路及びTFEBの核移行によるリソソームの活性化の関与が示唆された。
“DNA methyltransferase- and histone deacetylase-mediated epigenetic alterations induced by low-level methylmercury exposure disrupt neuronal development”
Suzuna Go, Hisaka Kurita, Manami Hatano, Kana Matsumoto, Hina Nogawa, Masatake Fujimura, Masatoshi Inden, and Isao Hozumi
Arch Toxicol, 2021, in press
doi: 10.1007/s00204-021-02984-7
(ひとこと) メチル水銀 (MeHg) はかつて水俣病を引き起こした原因化学物質であるが、現在はこのような高濃度の環境中からの曝露はほとんどない。現在は、魚介類摂取からの日常的な低濃度のMeHg曝露影響が懸念されている。特に低濃度MeHg曝露に対するリスク集団は胎児であり、MeHgは胎盤を通過し、脳血液関門が未発達な胎児脳に直接的な影響を与える可能性がある。本研究では、実験的に低濃度のMeHgが神経分化における神経突起伸長の抑制を引き起こし、その変化がDNAメチル化転移酵素 (DNMT1) によるDNAメチル化上昇、ならびにヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC3, HDAC6) によるヒストンアセチル化減少を介したエピジェネティクスの機構で調節されていることを見出した。
[A02公募: Shinya Toyokuni]
“Ferroptosis at the crossroads of infection, aging and cancer”
Toyokuni S, Yanatori I, Kong Y, Zheng H, Motooka Y, Jiang L.
Cancer Sci, 2020, 111, 2665-2671
doi: 10.1111/cas.14496
(ひとこと) 2012年に名付けられた新たな制御性壊死である「フェロトーシス」に関する短めの総説です。鉄を切り口として、感染、老化やがんとの関わりについて、現在の理解を簡単にまとめたものです。
“Asbestos conceives Fe(II)-dependent mutagenic stromal milieu through ceaseless macrophage ferroptosis and β-catenin induction in mesothelium”
Ito F, Yanatori I, Maeda Y, Nimura K, Ito S, Hirayama T, Nagasawa H, Kohyama N, Okazaki Y, Akatsuka S, Toyokuni S.
Redox Biol, 2020, 36, 101616
doi: 10.1016/j.redox.2020.101616
(ひとこと) アスベスト繊維(石綿)の中皮腫発がん性の機序に関する論文です。アスベスト繊維がその形状からマクロファージの死を量産し(早期にはライソゾーム依存性細胞死、後期にはフェロトーシス)、それに伴って細胞外に「鉄過剰環境」が形成され、リモートに体腔を覆う中皮細胞をがん化させていくというストーリーになります。発がんの過程で、中皮細胞のβカテニン高発現が鍵となることがわかりました。
“Carcinogenesis as side effects of iron and oxygen utilization: from the unveiled truth toward ultimate engineering”
Toyokuni S, Kong Y, Cheng Z, Sato K, Hayashi S, Ito F, Jiang L, Yanatori I, Okazaki Y, Akatsuka S.
Cancers, 2020, 12, E3320
doi: 10.3390/cancers12113320
(ひとこと) 世の中にはタバコなどたくさんの発がん剤があります。しかし、発がんの根本的な原因は私たちが「鉄」と酸素を極めて長期間使っているからではないのか、という仮説にたった総説です。私たちがこの30年間で明らかにしてきたことをいろいろな角度から説明しています。後半では、それに対する解決方法を提示しています。
[A02公募: Takayoshi Suganami]
“Iron-Rich Kupffer Cells Exhibit Phenotypic Changes during the Development of Liver Fibrosis in NASH”
Yohei Kanamori, Miyako Tanaka, Michiko Itoh, Kozue Ochi, Ayaka Ito, Isao Hidaka, Isao Sakaida, Yoshihiro Ogawa, Takayoshi Suganami
iScience, 2021, 24, 102032
doi: 10.1016/j.isci.2020.102032
(ひとこと) 本研究では、細胞内鉄含量の多い常在性マクロファージ(クッパ-細胞)が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における肝線維化(硬化)の進行に重要であることを明らかにしました。NASHはメタボリックシンドロームに合併する肝病変であり、予後良好の単純性脂肪肝と異なり、炎症や線維化を伴って慢性に進行します。特に肝線維化は、肝硬変や肝がん、生命予後を規定する因子として重要です。また、わが国における肝がんの主要な原因は、従来はウイルス性肝炎でしたが、近い将来、NASHが取って代わると想定されています。なお、プレスリリースが所属機関より出ていますので、こちらもどうぞ。
