[A02-1: Yoshiaki Furukawa]
“Intrinsic structural vulnerability in the hydrophobic core induces species-specific aggregation of canine SOD1 with degenerative myelopathy–linked E40K mutation”
Hashimoto K, Watanabe S, Akutsu M, Muraki N, Kamishina H, Furukawa Y, and Yamanaka K*
J Biol Chem, 2023, in press
doi: 10.1016/j.jbc.2023.104798
(ひとこと) SOD1遺伝子変異は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症原因の一つですが、イヌにおいてもSOD1遺伝子に変異(E40K)があると、ALSに類似した運動ニューロン疾患である変性性脊髄症(DM)を発症します。ALSと同じように、変異に伴うアミノ酸置換(E40K)がイヌSOD1(cSOD1)の構造に影響を及ぼし、DMを発症させると考えられていますが、詳細は明らかでありません。今回、名古屋大学の山中宏二先生のグループは、cSOD1の117番目のアミノ酸であるメチオニンをロイシンに置換すると、E40K変異によるcSOD1の構造異常が見られなくなることを見出しました。そこで、私たちのグループでは、M117L変異がcSOD1の構造に及ぼす影響を明らかにするために、結晶構造解析を行いました。その結果、メチオニンはcSOD1構造のコアとなる疎水的な領域に位置しており、その近傍に空隙が生じていることがわかりました。一方で、メチオニンよりもサイズが少し大きな疎水性アミノ酸であるロイシンに置換すると、その空隙がピタリと埋まり、cSOD1のコア構造が安定化されることが考えられました。ヒトのSOD1は117番目のアミノ酸がもともとロイシンであることを考えると、イヌのSOD1はヒトのSOD1よりも構造的に不安定で、E40Kのようなアミノ酸置換によって構造が異常化しやすいのではないかと提案することができました。 なお、プレスリリースが所属機関より出ていますので、こちらもどうぞ。
“Characterization of a novel cysteine-less Cu/Zn-superoxide dismutase in Paenibacillus lautus missing a conserved disulfide bond”
Furukawa Y*, Shintani A, Narikiyo S, Sue K, Akutsu M, and Muraki N
J Biol Chem, 2023, in press
doi: 10.1016/j.jbc.2023.105040
(ひとこと) 銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(CuZnSOD)はスーパーオキシドの不均化を促進する酵素で、バクテリアからヒトまで保存されています。銅イオンと亜鉛イオンを結合し、分子内ジスルフィド結合を形成することで、タンパク質としての構造が安定化され、酵素活性を発揮します。私たちはこれまでに、分子内ジスルフィド結合が構造安定性や酵素活性に極めて重要な役割を果たしており、CuZnSODに高度に保存されていることを示してきました。しかし、米国NCBIのデータベースに登録されたCuZnSODを精査したところ、一部のPaenibacillus(グラム陽性菌)におけるCuZnSOD(PaSODと命名)はシステインを持たず、これまでに知られていない新たなドメイン構造を有していることが予想されました。そこで本研究では、PaSODの発現・活性・構造を明らかにし、なぜ、システインを持っていないのか、その意義について議論しています。
[A02公募: Takao Fujisawa]
“TOLLIP acts as a cargo adaptor to promote lysosomal degradation of aberrant ER membrane proteins”
Hayashi Y, Takatori S, Warsame WY, Tomita T, Fujisawa T, Ichijo H
EMBO J., 2023, e114272
doi: 10.15252/embj.2023114272
(ひとこと) 今回私たちは、TOLLIPというタンパク質が、小胞体に蓄積した異常な膜タンパク質を選択的に認識してリソソーム分解へと導くことで小胞体のタンパク質恒常性を維持し、小胞体ストレスの抑制に寄与していることを発見しました。私たちは以前、銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)が遺伝子変異やストレスにより構造変化を起こして小胞体ストレスを引き起こすことを報告しており、今後、SOD1が引き起こす小胞体ストレスとTOLLIPとの関連を解析していきます。なお、プレスリリースが所属機関より出ていますので、こちらもどうぞ。