[B01-1: Yasumitsu Ogra]
“Production of a urinary selenium metabolite, trimethylselenonium by thiopurine S-methyltransferase and indolethylamine N-methyltransferase”
Y. Fukumoto, H. Yamada, K. Matsuhashi, W. Okada, Y. Tanaka, N. Suzuki and Y. Ogra
Chem. Res. Toxicol., in press
doi: /10.1021/acs.chemrestox.0c00254
(ひとこと)動物が摂取したセレンやヒ素は、メチル化代謝を受けて尿中へ排泄されます。セレンの場合は3段階のメチル化を受けて排泄されますが、このメチル化には2つの酵素、すなわちTPMTとINMTが関与していることを明らかにしました。特に、1段階目と2段階目はTPMTが、2段階目と3段階目はINMTが担うというメチル化の分業体制があることがわかりました。またこれらメチル化酵素はセレンに特異的で、ヒ素のメチル化には関与しないことも明らかになりました。
“Elucidation of tellurium biogenic nanoparticles in garlic, Allium sativum, by inductively coupled plasma-mass spectrometry”
Y. Tanaka, S. Takada, K. Kumagai, K. Kobayashi, A. Hokura and Y. Ogra
J. Trace Elem. Med. Biol., in press
doi: /10.1016/j.jtemb.2020.126628
(ひとこと)これまで生命体は、金属毒性に対して、様々な解毒機構を有していることが明らかにされています。例えば、金属結合タンパク質を誘導したり、排泄トランスポーターの発現や機能を活性化したりなどです。これらの解毒機構に加えて、曝露された毒性金属をナノサイズの元素状の金属に変換し解毒するシステムがあることを確認しました。レアメタルの一種であるテルルをニンニクに曝露した時に、ロッド状のナノサイズの元素状テルルに変換されることを見出しました。これまで微生物ではこのような作用があることは知られていましたが、高等植物であるニンニクでは初めての例です。我々は、生命体が形成するナノ粒子をバイオジェニックナノ粒子と命名し、その毒性学的意義の解明や環境科学、食品衛生学、創薬科学への応用展開を目指しています。
“Quantitative elemental analysis of a single cell using inductively coupled plasma-mass spectrometry in fast time-resolved analysis mode”
Y. Tanaka, R. Iida, S. Takada, T. Kubota, M. Yamanaka, N. Sugiyama, Y. Abdelnour and Y. Ogra
ChemBioChem., in press
doi: /10.1002/cbic.202000358
(ひとこと)酵母、珪藻、赤血球など、異なる生物種に由来する細胞について、一細胞ICP-MS分析に関する諸条件や分析の実態について報告しました。それぞれの細胞を特徴付ける元素、例えば葉緑体のMgやヘモグロビンのFeなどを正確に定量できる手法を報告し、今後の応用展開に繋がるものと期待しています。
[B01-3: Satoko Akashi]
“Screening of protein-ligand interactions under crude conditions by native mass spectrometry”
Takano K, Arai S, Sakamoto S, Ushijima H, Ikegami T, Saikusa K, Konuma T, Hamachi I, *Akashi S.
Anal Bioanal Chem, in press
doi: /10.1007/s00216-020-02649-x
(ひとこと)タンパク質と特異的に結合するリガンドを一般的な物理科学的手法でスクリーニングする場合、高度に精製したリコンビナントのタンパク質を用いる必要があります。私たちは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をモデルタンパク質として、大腸菌で発現させたのち、精製せずに特異的なリガンドとスクリーニングする手法を、ネイティブ質量分析法を用いて構築しました。
[B01公募: Yasuo Uchida]
“Comparison of Absolute Protein Abundances of Transporters and Receptors among Blood-Brain Barriers at Different Cerebral Regions and the Blood-Spinal Cord Barrier in Humans and Rats”
Uchida Y, Yagi Y, Takao M, Tano M, Umetsu M, Hirano S, Usui T, Tachikawa M, Terasaki T
Mol Pharm, 2020, 17(6), 2006-2020
doi: 10.1021/acs.molpharmaceut.0c00178
(ひとこと) 金属輸送担体を含めた血液脳関門(BBB)の輸送担体群を網羅的に同定し、それらのタンパク質絶対存在量をはじめて解明しました。特に、ヒトの脳組織から純度よく血液脳関門画分(脳毛細血管)を単離することに成功し、血液脳関門の輸送担体群の存在量についてヒトと動物の間、ヒト個人間、部位間の違いを網羅的に定量でき、ヒト血液脳関門の輸送担体アトラスを完成させることができました。
“Abundant expression of OCT2, MATE1, OAT1, OAT3, PEPT2, BCRP, MDR1 and xCT transporters in blood-arachnoid barrier of pig, and polarized localizations at CSF- and blood-facing plasma membranes”
Uchida Y, Goto R, Takeuchi H, Łuczak M, Usui T, Tachikawa M, Terasaki T
Drug Metab Dispos, 2020, 48(2), 135-145
doi: 10.1124/dmd.119.089516
(ひとこと) 金属輸送担体を含めた血液クモ膜関門(Blood-Arachnoid Barrier; BAB)の輸送担体群を網羅的に同定し、それらのタンパク質絶対存在量をはじめて解明しました。特に、BABと同じく、脳脊髄液に接している血液脳脊髄液関門(BCSFB)における発現量と比較し、脳脊髄液内の物質の動態制御におけるBABとBCSFBの寄与の違いを示唆しました。さらに、BABは、クモ上皮細胞が密着結合で連結した形成される関門ですが、クモ膜上皮細胞の血液側細胞膜と脳脊髄液側細胞膜を分画し、一斉に輸送担体群の細胞膜局在を決定しました。
“Oxidative stress-induced activation of Abl and Src kinases rapidly induces P-glycoprotein internalization via phosphorylation of caveolin-1 on tyrosine-14, decreasing cortisol efflux at the blood-brain barrier”
Hoshi Y, Uchida Y, Tachikawa M, Ohtsuki S, Couraud PO, Suzuki T, Terasaki T
J Cereb Blood Flow Metab, 2020, 40(2), 420-436
doi: 10.1177/0271678X18822801
(ひとこと) 血液脳関門は、血液および脳内の金属濃度によって影響を受けます。代表的な病態は、酸化ストレスです。本論文では、酸化ストレス環境下の血液脳関門細胞における短時間のリン酸化シグナルの変化を網羅的かつ定量的に解明しました。リン酸化シグナルの活性化に伴って、P糖タンパク質(異物排出トランスポーター)の活性が分単位で低下することが明らかとなりました。
“Establishment and validation of highly accurate formalin-fixed paraffin-embedded quantitative proteomics by heat-compatible pressure cycling technology using phase-transfer surfactant and SWATH-MS”
Uchida Y, Sasaki H, Terasaki T
Sci Rep, 2020, 10(1), 11271
doi: 10.1038/s41598-020-68245-2
(ひとこと) ヒトの組織内の分子機構をとらえるために、ヒト組織の利用は欠かせません。新鮮・凍結組織の利用は制限されており、十分に利用することができません。対照的に、ホルマリン固定パラフィン包埋組織は、検体数が豊富であるため、有用です。しかし、組織内のホルマリン架橋が種々の実験技術の適用を困難にしており、あまり研究に利用されていないのが現状です。本論文では、ホルマリン固定パラフィン包埋組織の前処理・測定・解析を大幅に改良した次世代型定量プロテオミクス法を開発しました。ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いた(病態)分子機構の解明を加速させることが期待されます。
“Physiological and Pharmacological Roles of “Blood-Arachnoid Barrier”, a New Interface of Central Nervous System: Importance of Quantitative Proteomics to Open up a New World”
Yasuo Uchida
Proteome Letters, 2020, 5(1), 1-11
doi: 10.14889/jpros.5.1_1
(ひとこと) 中枢組織の外周を覆う「血液クモ膜関門」に関する総説を発表しました。血液脳関門よりも、たくさんの輸送担体が発現しています。中枢組織への金属供給ルートは、実は、血液脳関門を介するのではなく、この血液クモ膜関門を介するのかもしれません。今後の研究に期待です。
