第4回領域会議報告
領域代表:津本 浩平(東大)
運営統括:城 宜嗣(兵庫県立大)
本領域では、本年4月に公募班員をお迎えした後に、5月に第3回領域会議(分子科学研究所)を行い、2日半で計画・公募班員の研究計画発表を行う予定でした。しかし、コロナ禍によりオンライン会議への変更を余儀なくされ、5月24日(日)に2時間で班員全員の自己紹介を行いました。また、8月末には2泊3日の夏合宿(北海道ルスツ)において、班員間の研究交流会、若手交流会、測定技術講習会、他領域との交流会などを計画していましたが、これもコロナ感染第二波の影響で開催できなくなりました。そこで、急遽、8月31日(月)に京都テルサを会場として、オンラインとのハイブリッド形式で、第4回領域会議を開催しました。27名の会場参加者と70名以上のオンライン参加者がありました。その中には、2名の評価委員、5名のリーディングサイエンティスト、2名の学術調査官のご参加もありました。
会議では、まず25件のプログレスレポートがありました。コロナ禍の下で中々思うように研究が進まない中でも、新しい研究結果がいくつか示され、ハイブリッド会議という不自由な形態でしたが活発な質疑応答が行われました。特に、6〜8月の3ヶ月間に行われたIBmS Web Seminarの成果と思われますが、公募・計画班員の間での連携研究が数件開始されており、この領域における班員の方々の意識の高さを窺い知ることができました。
本会議の最後に、「疾病と金属」をテーマに1時間のパネルディスカッションを行いました。このテーマは本領域の採択時から宿題とされてきたもので、「臨床医学と生命金属との関わり」に関して班員間の共通認識の醸成と問題点の明確化を目的としました。具体的には、『金属動態から見た各疾患の「共通性」』をディスカッションテーマに設定し、モデレーターを古川・神戸に、パネラーを計画班の2名(津本、保住)と公募班の4名(菅波、小川、木下、中川(貴))に務めていただきました。さまざまな疾患の背景に存在する「炎症」に関する議論をスタートに、神経変性疾患、感染症、がん、ミトコンドリア病において、共通の機序や責任分子があるかどうか討議しました。特に、様々な疾患に見られる金属動態の破綻は、その程度や影響が細胞ごとに異なっている点が指摘され、病態に関わる「分子」を特定するためには、1細胞ごとに金属動態を分析・観察する手法の開発が望まれるという意見がありました。そのためには、プロテオミクスなどの網羅的な分析に加えて、機器分析の精度向上や、より特異性の高いプローブ(有機分子)の開発、そして、分子の構造解析といった、異分野間での連携が極めて肝要であるという共通認識を得ることができました。さらには、金属を活用した医薬品の可能性や金属を標的とした疾患の早期診断の可能性についても議論されました。パネラーだけでなく会場からも様々な意見が出され、企画者が予想していた以上に活発な議論が展開され、大いに盛り上がりました。今回の領域会議のメインイベントにふさわしいものになりました。
この領域会議の前日には総括班会議が行われ、今後の領域の活動に関して議論しましたので、その内容も領域会議の最後に全班員にお伝えしました。IBmS Web Seminarが9月4日で終了しましたが、その後しばらくは研究、特に連携研究に専念すること、研究最前線ビデオシリーズの作成に協力いただくこと、1月にはその時のコロナ感染状況を見ながら第5回の領域会議を行うことなどです。領域の活動を行うには大変不自由な状況ですが、それを乗り越えて大きな成果をあげることをめざして、第4回領域会議を終了しました。
ちなみに、会議では、京都テルサの感染予防対策方針に従った机椅子の配置と、非接触体温計による体温測定、アルコールジェルによる手指の消毒、発表者と聴衆の間のシールド、マイク・プレゼン機器の使用後の消毒、窓の常時開放などを行いました。急遽、京都でのハイブリッド会議と決めたことにより、神戸さんには様々な事にお骨折りいただきました。会議の準備・運営にご協力いただいた方々を含め、感謝いたします。
なお、当日のプログレスレポートの一部については、こちらからご覧になれます(要パスワード)。


